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第2章:スタッフを守る(傷害保険)

「賠償責任保険」ではスタッフは守れない

よくある勘違いが「イベント保険に入ったから、スタッフの怪我も大丈夫」というものです。 第1章の保険はあくまで「他人(客)」用であり、 「身内(スタッフ・ボランティア)」 は対象外です。

もし高校生スタッフが熱中症で倒れて後遺症が残ったら? その責任と補償は、主催者であるあなたにのしかかります。


最強のコスパ:社会福祉協議会の「ボランティア活動保険」

民間保険会社の傷害保険(1人500円〜1000円)に入る必要はありません。 「全国社会福祉協議会(社協)」 のボランティア保険一択です。

基本プラン(Aプラン)の内容

※令和6年度参考価格。年度により数十円変動の可能性あり。

  • 保険料:年額 350円 / 1人
  • 補償期間:加入日〜翌年3月31日(年度末まで有効)
  • 補償対象
    • 活動中の怪我
    • 往復途上の事故
    • 熱中症(※ここが重要!)
    • 他人に怪我をさせた場合の賠償(※スタッフ個人の賠償責任)

補償金額の目安(熱中症含む)

プランA(350円)の場合でも、入院日額の手厚さは驚異的です。

項目Aプラン(350円)天災・地震補償プラン(500円)
死亡・後遺障害最高 352.9万円最高 579.5万円
入院保険金日額 6,500円日額 10,000円
通院保険金日額 4,000円日額 6,000円

熱中症で3日間入院しただけで、約2万円がおります。 参加費無料のボランティアにとって、これ以上の安心材料はありません。


運用上の「落とし穴」

1. 「事前登録」の壁

この保険は 「名簿の事前提出」 が絶対条件です。 「当日飛び入り参加のボランティア」は、その場で名簿に追加して社協にFAXしない限り、 無保険状態 になります。

対策: 当日参加用として、民間保険(スポーツ安全保険の当日枠など)を検討するか、「スタッフは事前登録制のみにする」 と割り切るのが安全です。

2. 「対人・対物」の重複

ボランティア活動保険には「賠償責任補償」もついていますが、これはあくまで 「ボランティア個人が」 訴えられた場合です。 イベント全体の事故(セット倒壊など)は、第1章の「イベント賠償責任保険」でしかカバーできません。 「ボランティア保険があるからイベント保険はいらない」とはなりません。

アクションプラン

  1. スタッフの人数を確定させる(例:100人)。
  2. 予算 35,000円(350円×100人)を確保する。
  3. スタッフ全員の「氏名・住所」をリスト化する。
  4. 開催1週間前までに、地元の社協(区役所内にあることが多い)へ行って手続きする。
  5. 「熱中症も対象ですよね?」 と念のため窓口で確認する。 「高校生実行委員」や「ボランティアスタッフ」が多数参加しますね。 彼らは大切なお子さんを預かっている状態です。もし怪我をさせてしまい、後遺症が残るようなことがあれば、主催者の責任は重大です。 絶対に無保険で働かせてはいけません。

2. 熱中症リスク

開催日は5月5日。意外と暑くなります。 屋外のアスファルト照り返しの中での作業は、熱中症リスクが高いです。 社協のボランティア保険には標準で 「熱中症」 が含まれていることが多いですが、確認してください。

3. 加入の落とし穴:名簿提出

ボランティア保険の多くは、 事前の名簿提出 が必要です。 「当日飛び入り参加のボランティア」は、保険の対象にならない(または手続きが間に合わない)ケースが多いです。

対策:

  • スタッフ名簿は開催の 1週間前 までに確定させる。
  • 保険代理店や社協窓口で 「氏名報告がないと補償されないか?」 を確認する。
  • どうしても当日参加があるなら、 「行事保険(当日参加対応型)」 があるか社協で聞く。

アクション

地元の「社会福祉協議会」に行って、こう伝えてください。

「5月5日のイベントで、高校生ボランティアが100人参加します。全員を ボランティア活動保険(行事用) に入れたいです。名簿はいつまでに必要ですか?」

予算8万円(食費)や10万円(Tシャツ)がありますが、 ここから数万円削ってでも保険に回すべき です。

参考文献 (References)